愛犬の様子はおかしくありませんか?
重篤な病気を未然に防ぐためには、予防と早期発見・早期治療が大切です。ワンちゃんは言葉で異常や不調を訴えることができませんので、飼い主様が敏感に察知してあげる必要があります。こちらではワンちゃんに起こりやすい身近な症状と、考えられる病気についてご説明します。何か異変に気づいたら、すぐに大阪府和泉市の和泉動物病院までご連絡ください。
部位別の主な病気
目の主な病気
眼瞼(がんけん)炎
眼瞼炎とは、眼瞼(まぶた)に炎症が起きる病気です。アレルギー、細菌などの感染、外傷などが原因で起こります。また、免疫の異常により起こることもあり、全身疾患が原因のこともあります。
症状
片眼あるいは両眼に発生し、まぶたの充血や腫れがみられます。また、痛みやまぶたの痙攣、そして流涙などの症状が現れます。
治療
抗生剤や消炎剤の全身および局所投与により治療を行います。寄生虫性や真菌性の場合はそれに伴う治療が必要となります。目を気にして掻いていたり、こすってしまう場合はエリザベスカラーをつけることもあります。
予後
適切な治療をすれば予後は良好です。免疫の異常など全身疾患が原因の場合は、継続的な治療が必要なことがあります。
結膜炎
結膜炎とは、眼瞼結膜(まぶたの裏)や眼球結膜(白眼部分)に炎症が起こる病気です。細菌やウイルスなどの感染、外傷などが原因で起こります。アレルギーなどが原因で起こります。また、免疫の異常により起きることもあり、全身疾患が原因のこともあります。
症状
目やにがたくさん出るようになるほか、目の充血、目の腫れ、痛み、痒みなどの症状が現れます。
治療
抗生剤や消炎剤の全身および局所投与により治療を行います。寄生虫性や真菌性の場合はそれに伴う治療が必要となります。目を気にして掻いていたり、こすってしまう場合はエリザベスカラーをつけることもあります。
予後
適切な治療をすれば予後は良好です。免疫の異常など全身疾患が原因の場合は、継続的な治療が必要なことがあります。
角膜炎および角膜潰瘍
角膜炎とは、角膜の表面に炎症が起きる病気です。感染、乾燥、まつ毛などによる刺激、免疫の異常などが原因で起こります。
角膜潰瘍とは、角膜上皮を越えて実質まで角膜が欠損している状態をいいます。さらに悪化すると角膜の穿孔(せんこう)が起こります。
症状
痛み、流涙、目やに、充血、角膜の混濁などの症状が現れます。
治療
膿性の目やにが見られる場合や二次感染の予防のために抗生剤(目薬・内服)の使用や、
角膜上皮を保護する目薬、障害の進行を抑える目薬などを使用します。症状の程度によっては血液から作製する血清を点眼することがあります。
深い角膜潰瘍などの場合は潰瘍部分を結膜などの組織で覆う外科的処置を必要とする場合があり、その場合は専門の病院を紹介させていただくことがあります。
目を気にして掻いていたり、こすってしまう場合はエリザベスカラーをつけることもあります。
予後
適切な治療をすれば予後は良好です。しかし、気付くのが遅れた場合や病気の進行が早い場合は、失明にまで至ることがあります。
再発をすることもあり、注意して経過をみていく必要があります。
ぶどう膜炎
ぶどう膜炎とは、毛様体、脈絡膜からなる「ぶどう膜」に炎症が起きる病気です。
つまり、眼の表面ではなく眼の中の炎症のことをいいます。
原因としては、感染性、免疫の異常、内分泌疾患、血液疾患、外傷、腫瘍、その他にもさまざまな原因により引き起こされます。
症状
流涙、まぶたの痙攣、痛み、眼の赤み、眼のにごり、縮瞳などさまざまな症状がみられます。
治療
症状や原因、そしてぶどう膜炎に伴う合併症により治療法が異なりますが、基本的には炎症や痛みを抑えるための消炎鎮痛剤、縮瞳や毛様体痙攣による痛みに対しては散瞳剤、ぶどう膜炎からの緑内障には眼圧を下げる治療を行います。また、全身疾患が原因の場合はそれに対する治療を行う必要があります。
予後
全身疾患により起こるぶどう膜炎では、全身疾患の治療が適切であれば予後は良好です。しかし、腫瘍や糖尿病などの治療できない、あるいはコントロールがうまくいかない疾患の場合は、予後はあまりよくありません。
また、重度の場合は緑内障や白内障、網膜の変性などが起こり、失明などの可能性が高くなります。
緑内障
緑内障とは、眼圧の上昇により視神経や網膜に障害が起こることで視力の低下や失明が起こる病気です。
症状
眼圧の上昇により目の痛みや視覚の低下により物にぶつかる、瞳孔が開いている、眼が大きくなってくるなどの症状が現れます。
治療
眼圧を下げるための点眼薬や利尿薬などの全身投与薬によって治療を行いますが、眼圧上昇を引き起こしている別の病気がある場合はその治療も行う必要があります。
また、外科的治療が必要になることもあり、その場合は専門の病院を紹介させていただきます。
予後
発見が遅れ、すでに失明している場合は視覚が回復することはありません。
また、治療を行っても眼圧が下がらなければ、失明に至ることがあり、失明した後では眼球摘出が必要になる場合もあります。
白内障
白内障とは、遺伝性、加齢性、糖尿病などにより水晶体が混濁する病気です。
症状
水晶体が混濁するため、眼が白く見えます。
白内障の進行により症状が異なりますが、初期の状態では視覚に異常はありません。進行していくと視覚が低下し、物にぶつかったりすることがあり、さらに進行すると眼が見えなくなります。
また、白内障の原因によっては、眼の痛みや、炎症などを伴うことがあり、緑内障を続発することもあります。
治療
加齢性の初期の白内障では、進行を抑える目的で点眼薬を使うことがあります。
糖尿病やぶどう膜炎などの炎症による白内障ではそれに対する治療が必要となります。
白内障で失明した眼に対しては手術により視覚を取り戻すことができますが、原因や進行状態によっては手術しても視力が戻らないこともあります。
白内障手術を希望される場合は専門の病院を紹介させていただきます。
予後
白内障手術により、視覚を取り戻せることがあります。
白内障は進行していくと最終的に眼は見えなくなりますが、飼い主様のサポートにより日常生活に支障なく過ごすことができると思います。しかし、緑内障を発症することがあるため、注意してみていく必要があります。
耳・鼻の主な病気
外耳炎
外耳炎は鼓膜から外側の耳道に発生する炎症性疾患です。発生には多くの因子が関与しており、物理的要因(異物、腫瘤性病変)、基礎疾患(アレルギー性疾患、角化異常、代謝性疾患など)、外部寄生虫、細菌感染、マラセチア感染などが組み合わさり、病態を悪化させていることが多いです。外耳炎は慢性化すると、治療のために侵襲性の高い手術が必要となることがあり、外耳炎の治療は早期に対処していくことが重要です。
症状
後肢で耳を掻く、頭を振る、耳垢が多い、耳から膿が出る、耳が臭いなどの症状が出ます。
治療
耳垢の検査、耳道内の検査を行い、原因を見つけて、それに応じて治療法を選んでいく必要があります。過剰な耳垢が蓄積していることが多く、洗浄液を用いて耳道内をキレイにします。炎症に対する治療も重要であり、軽度の炎症であれば点耳薬を使用し、重度あれば内服薬で治療を始めます。感染が認められる場合は抗生剤を使用します。耳道が重度に狭窄し、内科治療に反応しない場合は、外科手術の適応となります。
予後
外耳炎は早期に適切に治療を行うと予後はいいですが、慢性化すると治療に反応しにくくなり、外科手術が必要となるので注意が必要です。
耳ダニ症
ミミヒゼンダニというダニが耳道内または耳介に感染し、増殖することで生じる病気で、強い痒みが特徴的です。また、仔犬や仔猫に認められることが多いです。
症状
耳に強い痒みを生じるため、後肢で耳を掻く、頭を振るなどの症状が出ます。また、暗色~黒色の耳垢が特徴的です。
治療
ミミヒゼンダニに効く駆虫薬を使用します。犬、猫に容易に感染するため、多頭飼育の場合は症状のない子にも駆虫薬を使用することが大切です。
予後
駆虫することにより、ほとんどが治癒します。
鼻炎
鼻炎の原因となるものは特発性、真菌性、異物、アレルギーなどがあり、そこに細菌が二次的に感染し、病態を複雑にします。原因に合わせた治療を行わないと、再発や慢性鼻炎になることがあります。
症状
くしゃみ、鼻水、鼻出血、疼痛、悪化すれば呼吸困難などの症状が認められます。
治療
治療するにあたり、鼻炎の原因を特定するが大切です。そのため、当院では慢性の鼻炎、鼻出血の症例にはCT検査を提案しています。原因が判明すれば、原因に合わせて治療を行います。
予後
特発性の慢性鼻炎は治癒することはほとんどないため、症状の緩和が目的となります。
中耳炎
中耳炎とは、中耳で炎症が起こる病気です。細菌の感染、外耳炎の慢性化などが原因で起こります。外耳炎と同様の症状が起こったり、中耳のみで炎症を起こしたりすることがあります。
症状
耳をかゆがる、耳だれや耳垢が出るほか、頭を振る、頭を傾ける、目が揺れている、歩行困難などの症状が現れます。
副鼻腔炎
副鼻腔炎とは、鼻の奥にある副鼻腔で炎症が起こる病気です。鼻炎が慢性化することで起こります。症状が進行すると蓄膿症になることもあります。
症状
鼻水が出る、くしゃみ、鼻の上の腫れのほか、目やにが出る、鼻血などの症状が現れます。
口の主な病気
乳歯遺残
乳歯遺残とは、乳歯が抜けずに残っている病気のことです。
症状
乳歯が残っていると、永久歯が正常な場所で生えないため、歯並びが悪くなることがあります。歯並びが悪くなると歯と歯がぶつかったり、口の粘膜にあたり傷つけてしまうことがあります。また、永久歯と乳歯の間に歯垢・歯石がたまりやすくなり、歯周病が早く進行する原因となることがあります。
治療
乳歯の抜歯です。歯周病が進行している場合は、歯石除去などの処置を同時に行うことがあります。早期に発見できれば、永久歯の萌出に影響は少なくなるほかに、外科的矯正により正常な位置にずらすことができることがあります。
予後
放置しておくと、歯周病の進行が早くなるなど、他の病気の悪化を招くことがあります。
歯周病
歯周病とは、歯垢中の細菌に対して生体の炎症性反応により引き起こされる病気のことをいい、歯肉の炎症により歯肉ポケットができること(歯肉炎)と歯の周りの組織に炎症が起きること(歯周炎)を総称したものを歯周病と呼びます。
症状
口臭、ヨダレ、口の痛み、鼻水やくしゃみ、歯茎からの出血、歯が抜ける、顎の骨が折れるなどの症状が現れます。また、最近では歯周病に関連した細菌により心臓や腎臓、肝臓など他の臓器に悪影響を及ぼす危険性があります。
治療
デンタルグッズによるオーラルケアや麻酔下での歯石除去により口腔内の環境を清潔にすることが重要です。歯周病が進行している場合は抜歯が必要になることがあります。
予後
適切なケアや治療をすることで口腔内の環境を清潔に保つことができ、歯周病の進行を防ぐことができます。すでに進行している場合は抜歯などの処置により治療することができます。
歯瘻(しろう)
歯瘻とは、歯の根っこである根尖の周囲に感染あるいは炎症による病巣(根尖周囲病巣)ができ、その病巣から口腔内の歯肉・粘膜(内歯瘻)や皮膚(外歯瘻)に穴(瘻管)を形成する病気のことです。
症状
眼の下の腫れや皮膚に穴が開くなどの症状が現れます。
治療
根尖周囲病巣ができている歯の抜歯をおこないます。
予後
抜歯により原因を取り除く必要がありますが、抜歯をできない場合は抗生剤などを使い治療することもあります。しかし、原因が残っている限り再発を繰り返します。
口腔鼻腔瘻管
口腔鼻腔瘻管とは、歯周病などにより口腔と鼻腔の間の骨が溶けて、穴(瘻管)ができる病気のことです。
症状
くしゃみや鼻汁、鼻からの出血などの症状が現れます。
治療
原因である歯の抜歯をおこない、開いた穴の閉鎖を行います。
予後
放置していると慢性鼻炎や副鼻腔炎を起こし、場合によっては肺炎を引き起こす可能性があります。
口腔内悪性黒色腫(メラノーマ)
悪性黒色腫とは、口腔内にできる悪性の腫瘍です。メラニン色素を作る細胞ががん化して、口腔内の粘膜や舌、爪などに発生した後、急速に拡大してリンパ節や肺などに転移することもあります。10歳前後の高齢の犬に多くみられます。
症状
口臭、よだれが出るほか、血が混じったよだれが出ることもあります。予防が難しい病気なので、早期発見・早期治療が大切です。
皮膚の主な病気
アレルギー性皮膚炎(食物過敏症、アトピー性皮膚炎)
ヒトと同じように、イヌもネコもアレルギーになることがあります。動物では、食べ物に対するアレルギー(食物過敏症)も環境中の物質に対するアレルギー(アトピー)も、皮膚の赤みや痒みとして症状が出てくることがあります。これらのアレルギー性皮膚炎は比較的イヌに多い病気です,特に柴犬,ウエストハイランドホワイトテリアが多いと言われています。しかし、どの犬種でも発生する可能性はあります。
症状
皮膚の痒み、赤みが見られます。ほかにも脱毛やフケ、べたつき、皮膚の色の変化など様々な皮膚症状が認められる場合があります。また、外耳炎もアレルギーにより引き起こされることが多く、耳の匂いや赤み、腫れなどもよく認められる症状です。
治療
皮膚の状況により、様々な治療が組み合わせて行われます。飲み薬、塗り薬、シャンプー、フードなど、当院では多くの種類の治療法を取り揃えております。
予後
アレルギー体質を根治させるのはなかなか難しいと言われています。基本的にはこの体質とうまく付き合っていくことが大事です。
疥癬症
疥癬症とは、皮膚でかゆみや炎症を起こす病気です。イヌセンコウヒゼンダニという小型のダニに感染することで起こります。かゆみのために、自分で引っ掻いて皮膚を傷つけたりすることがあります。
症状
激しいかゆみのために、自分で引っ掻いて皮膚を傷つけて、その部分がかさぶたになったり、脱毛したりすることがあります。そのほか、肘、耳のまわり、腹部、踵などでフケや赤い発疹がみられます。
膿皮症
膿皮症とは、皮膚の細菌が増殖してしまい、皮膚が化膿してしまう病気です。この病気は様々な原因で引き起こされますが、アレルギー性皮膚炎などの病気が背景にあって起こることが多いです。
症状
皮膚にかさぶたのようなものができる、膿が付着している、皮膚の赤み、痒みなどがよくある症状です。
治療
抗生物質を使うことで細菌の繁殖を抑制します。抗菌シャンプーなどの薬用シャンプーの使用も効果的です。何らかの基礎疾患がある場合は、そちらも同様に治療をする必要があります。
予後
根底にある疾患によりますが、治った後も繰り返し発生するケースがあります.その場合はお薬やシャンプーでうまく付き合っていく必要があります。
マラセチア性皮膚炎
マラセチアとはカビの一種で、正常なイヌやネコの皮膚にもある程度は存在しています。しかし皮膚に問題のある動物では、マラセチアが過剰に増殖してしまい皮膚炎の原因となってしまいます。マラセチアは脂が好きなカビなので、べたべたした皮膚や耳の中で増殖することが多いです。
症状
皮膚の赤み、痒みが見られます。同時に皮膚のべたつき、フケなどが認められることも多いです。
治療
カビを倒すお薬である、抗真菌剤を使います。飲み薬も塗り薬もあります。しかし、元々アレルギー性皮膚炎などの問題がある動物でマラセチアが増殖している場合も多いので、その場合は同時に根底にある皮膚疾患を治療する必要があります。
予後
根底にある皮膚疾患によります。体質的な問題がある場合はうまく付き合っていく必要があります。
皮膚糸状菌症
皮膚糸状菌はMicrosporum属およびTrichophyton属のカビの一種です。イヌやネコの毛や毛穴が好きなカビで、感染すると脱毛を起こします。このカビは他のイヌやネコに移ることがあり、場合によってはヒトにも移ることもありますので注意が必要です。
症状
皮膚の脱毛が最もよく認められる症状です。痒みはある場合もない場合もあります。病変は全身性に発生する場合と一部にだけ認められる場合があります。
治療
病変の場所や大きさにより、飲み薬を使用する場合と塗り薬を使用する場合があります。また、他の動物との隔離や環境の消毒を行う必要があります。
予後
正しい診断と治療がなされれば、完治してくれることが多いです。
毛包虫症(ニキビダニ症、アカラス症)
毛包虫は、イヌやネコの毛穴に住んでいるダニの一種です。とても小さいので肉眼で確認することはできません。毛包虫は、正常なイヌやネコにもわずかながら寄生していますが、なんらかの原因でこの毛包虫が異常に増殖してしまうことで皮膚の脱毛などが発生します。この病気は、免疫力が低下するような基礎疾患を原因とすることがあるため、注意が必要です。
症状
皮膚の脱毛、赤み、痒みなどの症状が認められることが多いです。この症状は体の一部にだけ発生することもあれば、全身に発生することもあります。
治療
ニキビダニに対する飲み薬を使用します。場合によって、外用薬やシャンプーなどを併用することもあります。基礎疾患がある場合は、その治療を行う必要もあります。
予後
根底にある基礎疾患によります。特に基礎疾患がない場合は、治療に反応してくれることが多いです。
ホルモン性の脱毛症
皮膚に痒みや赤みがないにも関わらず毛だけが薄くなる場合、ホルモンに異常があるケースがあります。性ホルモン、甲状腺ホルモン、副腎から出るホルモンの異常により脱毛が起こることがあると言われています。また、原因は明らかになっていませんが、ポメラニアンなどの犬種によく認められる脱毛(脱毛症X、アロペシアX、ポメハゲと言われることもあります)も、何らかのホルモン異常が関連していると言われています。
症状
赤みや痒みを伴わない脱毛が起こります。主に体幹に脱毛が起こることが多く、頭や足の毛は残ることが多いです。
治療
原因によって治療法は変わります。ホルモン疾患であればお薬でホルモンをコントロールすることで治癒する場合があります。また、脱毛症Xには有効な治療法がないと言われています。一部の薬やサプリメントに効果がある場合や、避妊去勢により発毛が認められる場合もあります。
予後
ホルモン疾患の原因が正しく特定され、適した治療が行われれば、改善することが多いです。脱毛症Xは治療に反応しないことが多いですが、生命が脅かされるような疾患ではありません。治療に反応しても、効果は一時的で再発が起こる場合もあります。
体内器官の主な病気
気管虚脱
気管虚脱とは、気管が押しつぶされて正常な状態を保てなくなることで、呼吸困難になる病気です。遺伝のほか、肥満、リードの引っ張り癖などが原因で起こります。夏場に発生しやすく、症状が落ち着いても再発しやすいので注意が必要です。
症状
呼吸困難、咳のほか、よだれを垂らしたり、酸素不足でチアノーゼが出たりすることがあります。
僧帽弁閉鎖不全症
僧帽弁閉鎖不全症とは、心臓にある僧帽弁という弁が完全に閉じなくなることで、血液が逆流してしまう病気です。高齢の小型犬に多くみられます。血液が逆流することで、肺や気管などに負担がかかり、咳や呼吸困難などが起こります。
症状
咳、呼吸困難のほか、酸素不足でチアノーゼが出たり、腎不全や肺水腫を併発したりすることがあります。
膵炎(すいえん)
膵炎(すいえん)とは、膵臓が炎症を起こす病気です。膵液が逆流して膵臓を傷つけることで起こります。膵液の逆流の原因は、腫瘍、異物などにより膵管が詰まった、激しい嘔吐などです。
症状
腹部の激しい痛み、下痢、嘔吐などの症状が現れます。下痢と嘔吐が同時に起きると、脱水症状になることあります。
泌尿器・生殖器系の主な病気
慢性腎臓病
慢性腎臓病とは、腎臓の機能が低下する病気です。猫に多くみられますが犬でもよくみられ、年齢とともに症状が進行するほか、泌尿器疾患、感染症などが原因で起こることもあります。症状が進行すると尿毒症を引き起こし死に至ります。
症状
食欲がない、水をよく飲む、尿の量が多くなる、尿が薄いなどのほか、進行すると嘔吐、貧血、よだれが出るなどの症状も現れます。
治療
病気の進行を遅らせるために、投薬や食事療法を行います。症状に応じて、輸液療法を行うこともあります。
予後
早期に適切な治療を行えば腎臓の機能を長く維持する事が出来ますが、進行性の病気なので次第に腎機能が低下していき、最終的に予後は不良となります。
尿石症
腎臓や、尿管、膀胱、尿道などに結石ができる病気です。結石ができる原因は様々ですが、細菌感染が原因となることもあります。結石により、粘膜が傷ついたり、結石自体が尿路の閉塞を起こしたりします。特に尿道が細い雄の犬、猫は結石が詰まりやすいので注意が必要です。完全に詰まると腎不全を併発することもあります。
症状
血尿が出る、トイレに行く回数が増えるなどのほか、尿が出にくくなるなどの症状が現れます。尿路の閉塞により腎不全を併発すると、食欲不振、嘔吐などの症状も現れます。
治療
食事の変更で結石を溶かします。細菌感染が原因の場合は、抗菌薬の投与も行います。結石が大きすぎる場合や食事の変更では溶けない結石の場合、手術が必要になります。尿路の閉塞により腎不全を併発する場合は、輸液療法などの腎不全の治療も必要になり
予後
予後は良好なことが多いですが、適切な予防措置を行わなければ再発する確率も高い病気です。また、尿路閉塞により腎不全を併発している場合、早期に治療を開始できれば予後は良好ですが、腎不全が継続すると予後は不良です。
前立腺肥大症
前立腺肥大症とは、雄の犬の生殖器の1つである前立腺が肥大する病気です。去勢していない6歳以上の雄犬に多くみられます。前立腺が肥大することで、まわりの臓器を圧迫して、様々な障害を引き起こします。前立腺肥大症は去勢手術を受けることで、高い確率で予防できます。
症状
ほとんど自覚症状がないため、早期発見が難しい病気です。前立腺が肥大してまわりの臓器を傷つけた後、血尿、便秘、嘔吐などの症状が現れて初めて判明することが多いとされています。
治療
去勢手術が第一選択となります。
子宮蓄膿症
子宮蓄膿症とは、子宮の内部に膿が溜まる病気です。子宮が細菌に感染することで起こります。高齢の雌犬に多くみられますが、1歳などの若年期や猫にも起こることがあります。子宮蓄膿症は、避妊手術で予防することができます。
症状
元気がない、食欲がない、水をよく飲む、尿の量が増える、嘔吐、お腹が張る、陰部から血や膿が出るなどの症状が現れます。
治療
一般的に、卵巣・子宮を摘出する手術が第一選択となります。(高齢の場合や麻酔・手術のリスクが高い場合、抗菌薬の投与など内科的な治療を行うこともあります。)
予後
早期に適切な治療を行うことができれば、予後は良好です。しかし、発症してから時間が経過している場合や子宮内の膿が腹腔内に漏れ出てしまった場合、予後は不良なこともあります。
乳腺炎
乳腺炎とは、乳腺で炎症が起こる病気です。多くの場合、細菌に感染することで起こります。産後の犬に多くみられます。
症状
乳腺組織の腫れ、しこり、発熱、黄色い乳汁が出るほか、妊娠していないのに乳汁が出たり、乳腺が張ったりします。痛みがあるために、乳腺部分を触られるのを嫌がるようになることもあります。
治療
抗菌薬の投与を行います。
予後
予後は通常良好ですが、一度感染するとそれ以降、泌乳時に再発しやすい傾向
乳腺腫瘍(乳がん)
乳腺腫瘍(乳がん)とは、乳房に腫瘍ができる病気です。避妊手術を受けていない高齢の雌の犬、猫に多くみられます。乳腺腫瘍は避妊手術を受けることで、高い確率で予防できるようになります。犬の約50%の乳腺腫瘍は良性であり、残りの50%は悪性です。一方、猫の乳腺腫瘍は、約80~90%が悪性です。悪性の乳腺腫瘍は、肺など他の臓器にも転移しやすいので注意が必要です。犬の悪性乳腺腫瘍の約4%の症例は、炎症性乳がんと呼ばれ、極めて悪性度が高く、予後は不良な事が多い腫瘍です。
症状
乳首のまわりに硬いしこりができるほか、症状が進行すると患部から出血したり、悪臭がしたりします。
治療
一般に推奨される治療は、外科的切除です。抗がん剤が必要かどうかは、腫瘍のタイプや病理検査により決定します。
予後
良性腫瘍は、外科的切除により完治します。悪性腫瘍は、腫瘍のタイプや大きさ、転移の有無によって予後は異なります。腫瘍の直径が3cm以下の犬は、それ以上の犬に比べ予後が良好なことが多いです。また、炎症性乳がんは極めて予後不良です。
内分泌系の主な病気
糖尿病
糖尿病は、インスリンという膵臓から出るホルモンの量が少なくなることで起こります。日本国内では、特に起こりやすい犬種はなく、どの犬種でも認められる病気です。年齢は比較的高齢で起こることが多く、肥満体型にある動物がかかりやすいという特徴があります。
症状
特徴的な症状は、水を飲む量が多い、尿量が多い、体重の減少が挙げられます。この状態を長期間放置してしまうと最終的にケトアシドーシスという危険な状態に陥ってしまいます。ケトアシドーシスになると食欲不振、嘔吐、下痢、元気消失、衰弱、昏睡などの症状が出てきます。
治療
基本的に、糖尿病の治療はインスリンを外部から体に補充することで行います。当院には複数種類のインスリンの注射液をご用意していますので、その子の状態に合わせて使用するインスリンを判断します。インスリンの注射はご自宅で毎日やっていただくことになりますが、注射の方法も丁寧にご指導させていただきます。
予後
早期の診断と適切な治療・管理がなされれば、長生きしてくれることが多いです。
クッシング症候群(副腎皮質機能亢進症)
クッシング症候群とは、副腎という臓器から出るホルモン(グルココルチコイド)が出すぎてしまうことによって起こります。イヌでは発生率が高い病気です。このホルモンは生きるために不可欠なホルモンですが、過剰に分泌されてしまうと様々な問題が生じてしまいます。
症状
具体的な症状としては、水を飲む量が多い、尿量が多い、皮膚の色の変化や脱毛、お腹が張っているなどの症状がよく見られます。
治療
このホルモンを抑えるお薬があります。お薬を飲むのをやめると再び副腎から過剰に分泌されてしまうので、お薬は飲み続ける必要があります。
予後
適切な診断と治療がなされれば、長生きしてくれることが多いです。
アジソン病(副腎皮質機能低下症)
副腎から出るホルモン(グルココルチコイド・ミネラルコルチコイド)が異常に少なくなってしまうのがアジソン病です。この病気もイヌでしばしば認められます。はっきりとした原因は不明ですが、自分の免疫が副腎を攻撃してしまいホルモンの分泌が少なくなってしまうケースが多いです。
症状
食欲不振、嘔吐、下痢、体重減少、虚弱、低体温、ふるえ、けいれんなどの様々な症状が引き起こされます。また、グルココルチコイドはストレスに対抗するためのホルモンで、それが不足するためストレスに弱くなるという特徴もあります。ホルモン不足が重度の場合は、血液の流れが悪くなり命の危険があります。
治療
薬を飲むことで体にホルモンを補充します。
予後
適切なホルモン補充が行われる限り、元気に過ごしてくれることが多いと言われています。
甲状腺機能低下症
甲状腺から出るホルモンが少なくなってしまう病気です。この病気はイヌでよく認められる病気です。自分の免疫が甲状腺を攻撃してしまうことで起こると言われています。
症状
活動性の低下、無気力、倦怠感、体重の増加、脱毛、神経の異常などが認められることがあります。なかなかダイエットができないワンちゃんが、実は甲状腺機能低下症だったというケースもよく認められます。
治療
甲状腺ホルモンを飲み薬で補充することで治療します。飲み薬はやめると再びホルモンが足りなくなるので、ずっと飲み続ける必要があります。
予後
診断が正しく行われ,適切なホルモンの補充がなされれば,元気に過ごしてくれることが多いです。
血液の主な病気
免疫介在性溶血性貧血
免疫の異常により、自身の赤血球を異物とみなし、自分自身で赤血球を破壊する病気です。原因不明で突然発症する原発性のものと、腫瘍・感染が根底にあり、それに伴って免疫に異常が起こる二次性のものがあります。
症状
元気食欲の消失、運動不耐、発熱、粘膜蒼白、嘔吐、黄疸などさまざまな症状が認められます。
治療
貧血が重度である場合は、まず全血輸血を行う必要があります。自己免疫疾患であるので、免疫反応を抑えるために高用量のステロイド剤の投与が第一選択となります。ステロイド剤のみでコントロールできない場合は免疫抑制剤も併用します。
予後
二次性の場合は原因を除去できれば、完治が望めます。一方、原発性の場合、初期治療であるステロイド剤に反応すると長期生存が期待できますが、反応しない場合は死亡率が高くなります。また再発する危険性があるため、注意が必要です。
免疫介在性血小板減少症
免疫の異常により、自身の血小板を異物とみなし、自分自身で血小板を破壊する病気です。原因不明で突然発症する原発性のものと、腫瘍・感染が根底にあり、それに伴って免疫に異常が起こる二次性のものがあります。
症状
元気食欲の消失、運動不耐、頻呼吸など様々な症状が現れます。また、血を止める成分である血小板が破壊されるため、皮膚や粘膜に点状・斑状出血が生じ、鼻出血、血便、吐血、黒色便や粘膜蒼白など認められます。
治療
血小板がなく、出血が続く場合は、血小板と赤血球を補充するために全血輸血を行う必要があります。自己免疫疾患であるので、免疫反応を抑えるために高用量のステロイド剤の投与が第一選択となります。ステロイド剤のみでコントロールできない場合は免疫抑制剤も併用します。ステロイドが反応するまでの間、一時的に血小板を増やすことができる薬剤を使用することもあります。
予後
致死率は30%と言われており、注意が必要です。また、再発もするため定期的に血液検査をする必要があります。
白血病
骨髄の造血細胞が腫瘍化し増殖するため、正常な造血細胞が成長できなくなり、貧血、血小板減少、白血球減少など様々な状態を引き起こす病気です。臨床経過と腫瘍化している造血細胞の種類により、急性白血病と慢性白血病に分類できます。
症状
急性白血病の症状は非特異的で、食欲不振、発熱、体重減少、神経症状など認められ、全身のリンパ節腫大や粘膜蒼白などがみられることもあります。一方、慢性白血病は症状が認められることが少なく、健康診断時に偶然発見されることが多いです。
治療
急性白血病の治療は抗がん剤とステロイド剤の併用が中心となります。 一方、慢性白血病で症状が認めらない場合、経過観察とし定期的に血液検査を行います。症状が認められる場合はステロイド剤や抗がん剤で治療を行います。
予後
急性白血病の予後は厳しく、抗がん剤を使用しても生存期間が3カ月を超えることはほとんどないと言われています。一方、慢性白血病の予後は良く、治療しなくても2年以上生存することが多いです。
バベシア症
バベシアとは赤血球内に寄生する原虫と呼ばれる寄生虫のことであり、バベシアが寄生した赤血球は破壊され、重度の進行性貧血が生じることをバベシア症といいます。このバベシアはマダニから犬に感染するので、ダニ予防が重要となります。
症状
元気食欲の消失、運動不耐、発熱、粘膜蒼白、嘔吐、黄疸などさまざまな症状が認められます。
治療
バベシアを駆虫する薬剤を使用します。貧血が重度である場合は、全血輸血を行う必要があります。
予後
バベシアを駆虫する薬剤を使用しても、体内に存在するバベシアを完全に排除はできません。そのため、薬剤を止めると再発する可能性があります。そのため、バベシアに感染しないことが一番重要であり、ダニ予防が大切です。
タマネギ中毒
タマネギなどのネギ類には赤血球を壊す有害成分が入っており、犬・猫が食べると貧血が起きます。また、人用の風邪薬の成分にも同じように赤血球を壊す成分が含まれているため注意が必要です。
症状
元気食欲の消失、運動不耐、発熱、粘膜蒼白、嘔吐、黄疸などさまざまな症状が認められます。
治療
食べて間もない場合は催吐処置を施し、吐き出させます。時間が経過している場合は、有害成分の血中濃度を薄めるために点滴を行い、その後貧血の進行をチェックします。また、貧血が重度である場合は全血輸血を行います。
予後
対応が遅れて貧血が進行している場合は死亡することがありますが、多くの場合は数日で貧血が改善します。
ビタミンK欠乏症
ビタミンKは血液を凝固させるために必要なビタミンであり、欠乏すると出血が止まらなくなります。ビタミンKが欠乏する原因は大きく分けて2つあり、肝臓疾患、胆管閉塞などによるものと、殺鼠剤などの摂取によるものがあります。
症状
出血が止まらなくなるため、貧血が生じ、粘膜色が蒼白となります。発咳や呼吸困難も認められることもあります。胸腔内や腹腔内に出血が生じていることが多く、注意が必要です。
治療
ビタミンK製剤の経口または皮下投与による治療を行います。殺鼠剤を摂取している場合は催吐処置、活性炭投与、点滴を行い、血中濃度を薄めることも行います。肝疾患や胆管閉塞がある場合はそちらの治療も行います。
予後
出血が重度である場合は命を落とすことがありますが、適切に治療を行えば予後は良いです。肝疾患や胆管閉塞が改善しない場合は継続的なビタミンK製剤の投与が必要となります。
消化器系の主な病気
胃拡張捻転症候群
飲水後や食後に激しい運動を行うことで胃がガスで充満し、捻転してしまう病気で、大型犬によく認められます。拡張した胃によって血管が圧迫されることで循環不全などによるショック状態が引き起こされることがあります。
症状
流涎、吐き気、腹部膨満、腹痛などの症状が認められます。重症例では呼吸困難やショック状態に陥ってしまうこともあります。
治療
胃の減圧処置として胃ガスの除去や胃洗浄を行います。また、ショック状態の場合は、それに対する治療が必要です。脾臓や胃が虚血により壊死を起こしている場合は手術により摘出することもあり、また再発を防ぐために胃を固定する手術を行うこともあります。
予後
早期に治療ができれば予後は良好ですが、発症からの経過が長いほど死亡率は高くなります。また、術後3日経過し、再発が起こらなければ予後は良いとされています。
消化管内異物
若齢の犬や猫でよく認められ、おもちゃなどを誤食することが主な原因です。
症状
一般的な症状としては嘔吐や食欲不振が認められます。胃内に異物がある場合は症状が認められないこともあります。
治療
胃内に異物がある場合、小さく、鋭利でなければ催吐処置を行います。催吐処置で除去できなければ、全身麻酔下で内視鏡を用いて異物除去を行います。ただし、内視鏡により異物を除去できない場合は手術により摘出する必要があります。
予後
異物を除去することができ、状態が改善すれば予後は良好です。
炎症性腸疾患
消化管粘膜や粘膜下織へ炎症細胞が浸潤し、慢性消化器障害を呈する病気です。原因は明らかにされていませんが、免疫システムの異常や遺伝などが考えられています。炎症性腸疾患が疑われる場合には臨床症状と内視鏡による病理組織検査と併せて診断します。
症状
嘔吐、下痢、食欲不振、体重減少などの症状がみられ、重度では腹水や胸水貯留が認められることもあります。
治療
低アレルギー、低脂肪食を用いた食事管理を行います。食事管理だけで改善が認められない場合も多く、抗菌薬やステロイド、あるいは免疫抑制剤が必要となります。
予後
治療が奏功すれば予後は良好ですが、重症例や治療への反応が悪い症例では予後は悪いです。
便秘
何日も排便がない、排便する量が少ない、残便感があるといった状態のことです。便秘には明確な判断基準はなく、個体差があります。大きく①症候性便秘②機能性便秘に分類されます。①症候性便秘とは、腸管内異物などによって物理的に便の通過が妨げられる状態のことです。②機能性便秘とは、神経の異常や排便機能の異常によって腸管運動が低下したり便意を感じられなくなる状態です。
症状
通常は無症状ですが、便秘が続くと食欲不振や嘔吐、脱水などの全身症状を伴う事もあります。
治療・予後
①症候性便秘では通過を妨げている原因を除去する必要があり、多くは外科的処置を行います。 ②機能性便秘では、まず硬くなってしまった大量の便を浣腸や下剤を用いて除去する必要があります。その後は高繊維食により自然な排便を促したり、腸管の蠕動運動を刺激する薬を使用します
胆嚢粘液嚢腫
中齢~高齢の犬でよく認められます。胆嚢内に可動性の低い内容物が充満することにより胆管閉塞や胆嚢炎が引き起こされる他に、胆嚢が破裂することもあります。膵炎や腹膜炎などを併発することもあり、重篤な例では多臓器不全を引き起こし、突然死する可能性もあります。
症状
食欲不振、下痢、嘔吐、沈うつ、腹部の疼痛、黄疸などが認められます。軽度であれば無症状の場合もあります。
治療
利胆剤や抗菌剤、低脂肪食を用いた内科的な治療を行います。内科的な治療に反応が乏しい場合や進行が認められた場合は、胆嚢を切除する外科的治療が必要です。
予後
胆嚢破裂により腹膜炎が引き起こされると死亡率は高く、予後は悪いことが多いですが、早期に発見し、手術に耐えることができれば予後は良好なこともあります。
膵炎
膵臓で消化酵素が活性化されることにより、膵臓で炎症が引き起こされる病気です。重症例では全身に炎症が波及し、多臓器不全などの重篤な合併症が引き起こされ致死率が高くなる事もあります。
症状
食欲不振、嘔吐、下痢、沈うつ、腹部の疼痛などが認められます。
治療
嘔吐や下痢で失われた電解質や水分を点滴により補います。また、点滴は血液の循環を維持するうえで重要となります。消化器症状に対しては胃薬や吐き気止めを使用する他に、疼痛が認められる場合には痛み止めを使用します。最近では経口からの早期の栄養摂取も重要とされています。
予後
治療が奏功すれば予後は良好です。しかし、重症例では致死率が高く注意が必要です。
消化管内寄生虫
消化管内の寄生虫によって下痢などの消化器症状が引き起こされます。便中に虫卵が排泄され、排泄された虫卵を摂取する事で感染しますので、糞便はすぐに処理する必要があります。
症状
下痢、削痩などが認められますが、症状が認められないこともあります。
治療
寄生虫の種類に合わせた駆虫薬を使用します
予後
駆虫できれば予後は良好です。多頭飼いでは全員の駆虫を行わなければ感染が続き、治らないこともあります。
循環器系の主な病気
僧帽弁閉鎖不全症
犬の心臓疾患で最も一般的な病態であり、血液の逆流を引き起こしてうっ血性心不全を引き起こします。 粘液腫様変性によるものや、拡張型心筋症などによる二次的な要因によっても生じることがあります。
症状
軽度の僧房弁閉鎖不全症では症状がみられない犬もいます。 一般的には、疲れやすい、咳が出る、安静時の呼吸数の増加などがみられ、ひどい場合は急性の肺水腫が生じ、呼吸困難に陥ることもあります。
治療
基本的に強心剤や利尿剤、血管拡張剤などうっ血を改善する様々な薬を併用して治療していく必要があります。 完全に治すということは難しく一生付き合っていかなければいけない病気です。 最近では外科的に治療ができる施設もあります。
予後
症状が出始めると治療が困難になる場合があります。 今では症状が出ていない段階から強心剤などの治療を始めると、1年以上症状の発症を遅らせることが可能というデータもでています。 症状がないとなかなか気づくことができない病気ではありますが、定期的な健康診断をして早期発見・早期治療をしていきましょう。
犬糸状虫症(フィラリア症)
犬糸状虫(Dirofilaria immitis)が蚊を媒介して血管内に入り心臓内で増殖し、循環状態を悪化させる病態です。
症状
無症状の犬もいますが、咳やうっ血性心不全による運動不耐性、肝障害を起こしたりします。虫体の死骸が肺動脈につまってしまうこともあり、その場合は急性の症状を生じることもあります。
治療
犬糸状虫症は予防が大事になります。 年に1回は必ずフィラリア検査を受けて、毎月予防薬を飲んでいく必要があります(1年間予防できる注射もあります)。 フィラリア検査で感染が陽性と出た場合でも薬を飲んでいく必要があったり、外科的に虫体を釣り出すこともあります。
予後
薬を飲まずに放置していると予後は悪いです。予防できる病気なのでしっかり投薬を行いましょう。
犬の拡張型心筋症
心臓の四腔の拡張を特徴とし、主な障害は心筋の収縮機能不全・うっ血性心不全を呈します。好発犬種は大型犬で、一般的に雄で多くみられます。 また二次的に僧帽弁・三尖弁閉鎖不全症や心房細動などの不整脈を起こします。
症状
心臓に入ってくる血液を押し出すことができなくなるため、肺水腫や腹水が溜まり呼吸困難になる場合があります。
治療
治療は強心剤や利尿剤などに加え、不整脈の治療・予防が重要になります。
予後
症状により異なりますが、診断してから数ヶ月~数年ともいわれています。治療により症状を軽減することができる事もあります。
呼吸器系の主な病気
犬伝染性気管・気管支炎(ケンネルコフ)
主に若齢の犬において発症する急性かつ非常に伝染力の強い呼吸器疾患です。 本疾患の原因はウイルスや細菌の複合感染と考えられています。 具体的には犬パラインフルエンザウイルス、気管支敗血症菌、アデノウイルス2型が最大の危険因子と考えられており、マイコプラズマによる感染も示唆されています。
症状
咳に加えて食欲不振、発熱を呈し、さらに重症化すると膿性の鼻汁や目やに、呼吸困難を起こすこともあります。
治療
抗生剤の他に鎮咳薬や気管支拡張剤、噴霧吸入(ネブライザー)療法などを行います。
予後
高温多湿・冷温乾燥を避け、過剰なストレスの改善など適切な環境下であれば、積極的な治療を施すことで予後は良好です。 衰弱し、気管支炎や肺炎など併発してしまうと重症化してしまうので注意は必要です。
短頭種気道症候群
短頭種に特有の平坦な顔面、円形の頭部、そして短く太い頸部など、頭頸部の解剖学的構造に起因する閉塞性気道障害の総称です。 狭窄性外鼻孔、軟口蓋過長症、喉頭室外反、および喉頭虚脱、気管低形成、あるいは気管虚脱など複数の疾患が合併して起きます。 好発犬種はパグ、フレンチ・ブルドッグ、ボストン・テリア、イングリッシュ・ブルドッグ、シー・ズーなどにみられます。
症状
激しいパンティング(開口呼吸)、高体温、呼吸困難、失神などがみられます。
治療
外科的に対応できるのは、狭窄性外鼻孔、軟口蓋過長症、喉頭室外反、および気管虚脱です。これらは1歳未満で高い治療効果が得られるのに対し、高齢では低い改善率というデータがでています。内科療法は、鎮咳薬、ステロイド、酸素療法などがあります。
予後
内科療法を行いますが、解剖学的な特徴により発生する病態なので内科療法では限界があります。外科的に対応できる原因であれば、手術によってほとんどの症例で症状が軽減あるいは改善します。
気管虚脱
気管は筒状構造をしていますが、その支柱の役割を果たす気管軟骨が脆弱化により扁平化し、気管がつぶれてしまう疾患です。
症状
乾いた咳が一時的あるいは断続的にみられ、重症化すると持続的になります。呼吸困難やチアノーゼなどもみられることがあります。
治療
根本的な解決法としては外科的治療が必要です。 内科療法では鎮静・鎮咳剤、気管支拡張剤、ステロイドや場合によっては抗生剤などが必要になります。肥満の防止や高温多湿などの環境を避けるなどの予防も重要です。
予後
内科的に咳を抑えるか、外科的に改善を目指すかにより異なりますが、いずれにおいても咳を抑えることができれば予後は良好です。咳を抑えることができなければ呼吸困難に陥ることもあるため経過には注意が必要です。
肺炎
肺炎を引き起こす病態はウイルス、細菌、真菌などが一次性、あるいは二次性に感染を起こします。 多くの原因は誤嚥によって胃内容物や口腔咽頭内の物質を気道内に吸引することで、致命的な炎症を起こすことだと考えられています。 また膿性の鼻汁などがみられる場合は誤嚥性肺炎に注意する必要があります。
症状
咳、努力性の呼吸、呼吸困難、発熱、食欲不振がみられます。
治療
誤嚥性肺炎の場合は基本的には細菌感染なので抗生剤や気管支拡張剤などを使用します
予後
重篤化した場合は亡くなるリスクもあり、入院による集中治療が必要となることもあります。
神経系の主な病気
神経系の病気は大きく二つに分けられます。また、よく見られる症状も異なります。
1、脊椎・脊髄系の疾患
椎間板ヘルニア(ハンセンⅠ型、ハンセンⅡ型)、繊維軟骨塞栓症、脊髄梗塞、外傷、椎間板脊椎炎、脊髄腫瘍、脊椎腫瘍、脊椎不安定症、変性性脊髄症、脊髄軟化症
2、脳系の疾患
脳梗塞、脳内出血、外傷、脳腫瘍、肉芽腫性髄膜脳炎、壊死性髄膜脳炎
症状
1、脊椎・脊髄系の疾患
背中または首の痛み、麻痺による歩き方の異常、立てない
2、脳疾患
全身の痙攣発作顔面や手足などの一部の痙攣、多量のヨダレ、性格の変化、失明、知覚過敏、歩き方の異常、立てない
治療
各病気に応じて内科療法や外科療法、その他の治療方法を選択します。
・内科療法
病気に応じてステロイド / 非ステロイド性消炎鎮痛剤 / 免疫抑制剤/抗菌剤 / 抗癌剤の投薬、半導体レーザー治療、ケージレスト(安静)、リハビリテーション
・外科療法
椎間板物質摘出術、脊椎固定術、腫瘍摘出術
・放射線療法
メガボルテージ放射線治療
・再生療法
脂肪幹細胞を用いた再生医療
検査・診断
一般的な身体検査に加えて、血液検査、神経学的検査、レントゲン検査(必要に応じて超音波検査)を実施します。上記の検査にて原因と考えられる場所(責任病変部位)を絞り、CT検査やMRI検査といった高度画像診断に移行します。CT検査、MRI検査は全身麻酔が必要となります。それに併せて脳脊髄液採取、可能であれば病変部位の生検を実施し、病理検査に提出します。繊維軟骨塞栓症、脊髄梗塞、脊髄腫瘍、脊髄軟化症、脳疾患はMRI検査が診断能に優れています。一方、椎間板脊椎炎、脊椎腫瘍、脊椎不安定症ではCT検査が診断能に優れています。椎間板ヘルニアはCT検査で病変部位を特定し、MRI検査で脊髄の炎症範囲を評価することでより詳細な診断が可能となります。
整形系の主な病気
整形の疾患は大型犬・小型犬、前肢・後肢によって異なる病状を発症します。
大型犬(前肢)・・・骨折、汎骨炎、腫瘍、炎症性関節疾患
(後肢)・・・骨折、十字靭帯および/または半月症候群、アキレス腱断裂、十字靭帯断裂による変性性関節疾患
膝蓋骨脱臼、腫瘍、炎症性関節疾患
小型犬(前肢)・・・骨折、脱臼、腫瘍、頸椎椎間板疾患
(後肢)・・・骨折、膝蓋骨脱臼、十字靭帯および/または半月症候群、腫瘍、炎症性関節疾患
仔犬の時期に発症する疾患も大型犬・小型犬によって異なります。
大型犬(前肢)・・・骨折
(後肢)・・・肩の離断性骨軟骨炎(OCD)、肘の鉤状突起分離(FCP)汎骨炎
小型犬(前肢)・・・骨折
(後肢)・・・環軸亜脱臼、骨折、レッグペルテス(大腿骨頭の無血管性壊死)、膝蓋骨脱臼
症状
歩行の異常
治療
各原因に応じて手術や固定、投薬などで治療します。 非ステロイド性消炎鎮痛剤の投薬、ギプスなどを用いた外固定、手術による骨の位置の整復と固定、手術による異常部位の摘出/掻把、半導体レーザー治療、再生医療、リハビリテーション